『おちんちんの本』 その8

⑧一般病院の包茎患者はかわいそう

方針イメージ

 

 さて、包茎とその周辺事情としてマスコミが果たしてきた役割を書いてきたが、ここで実際に手術を受けるとして、医師側の事情を見てみよう。

 まず一般の病院だが、包茎手術はもちろん総合病院でも受けられる。とくに真性包茎の場合は明らかな機能障害だから、健康保険の適用も受けられる。

 手術の方法については次の章で詳しく述べるが、保険が適用される手術は背面切開法といって、包皮そのものは切りとらず、包皮口の狭くなっている部分を切って亀頭を露出させる方法である。いわば真性包茎を仮性包茎に変える手術である。

 簡単な手術なので、保険適用で三割負担なら一万円以下の費用ですんでしまう。ただ亀頭上部の包皮を切るだけなので、手術後、亀頭の両側と下部にかなり皮が余って見える。だから見てくれを気にする人には薦められない。

 しかし、私がここで問題にしたいのは手術の内容ではない。包茎患者に対する病院の対応の仕方であり、病院の雰囲気である。ノイローゼではないにしても、一般に包茎で悩んでいる人は包茎であることを恥ずかしいことと感じている。できれば人に知られたくない。自分が病院に来ていることさえ隠したい。これは非常にデリケートな感情である。

 ところが一般病院では、さまざまな病気の患者が来ているわけだから、包茎患者だけを特別扱いするわけにはいかない。他の病気と同じように看護婦が出てきて、

「どうしました、どこが悪いんですか?」

 と症状を尋ねる。そこで彼は看護婦の視線を気にしながら、下を向いて小さな声で、

「じつは、包茎なんです、皮がむけないんです・・・」

 と答えなければならない。病院によっては周囲に他の患者がいるところで答えなければならない。これはコンプレックスを抱いている人にとっては辛い。

 辛いのはこれだけではない。診察室でも頼りないカーテン一枚で遮られたベッドでオチンチンを人目にさらす。そこにも看護婦が立ち合うかもしれないし、まったく関係ない看護婦がベッドの前を横目でオチンチンを見ながら通り過ぎることもある。これではまるでさらしものだ。

 包茎患者は、病院に行く決意をするまでに十分すぎるほど悩んでいる。それほど悩んでこの対応では、あまりにも包茎患者がかわいそうである。デリケートな心をまったく無視した対応である。

 もつとも一般病院にはさまざま患者が来るのだから、包茎患者だけ特別扱いせよ、という要求はできない。

 これは手術に際しても同じである。包茎は手術としてはもつとも簡単な手術と考えられている。しかし、どんなに大きな病院でも包茎専用の手術室なんてないから、看護婦に囲まれてガンや移植手術でもするような大仰な手術台に寝なければならない。これでは、たかが包茎手術とはいえないような雰囲気である。

 ところが執刀する医師の立場から見れば、「たかが包茎手術」なのである。有名な医師がいる病院でも、その医師が包茎の執刀をすることはまず絶対にありえない。若手医師の勉強とぐらいしか考えていないのが実際であろう。

 包茎患者の多くは、オチンチンがどう見えるかということを悩んでいるのに、医師は機能上のことしか考えないから、その傷痕がどうかなんてあまり気を使わない。そして、経験の浅い若手の医師に、きれいな手術ができるほど包茎手術は簡単ではないのである。

 私自身、以前は大きな病院の泌尿器科に勤務していたから、その内部の事情はよくわかっているつもりである。命に関わる病気の患者を抱える一般病院を責めるわけにはいかないが、ここに包茎専門の医院が生まれる背景もあるのである。